冷たい風が私の頬を撫で、震えた足は小刻みに揺れている。
静かな公園では人気はない。
いるのは私達だけ。
どれくらいそうしていたのか分からないけど、優のバイトの時刻は刻一刻と近づいていた。
「じゃあ俺はそろそろ行くよ」
腕に付けた時計を見やり、私に視線を向けて。
「柚子はどうするの? ここにいたら風邪引くよ」
私の足の震えを見て言ったのだろう。
確かにさっきよりも気温は下がっている気がする。
足の震えも痛みより寒さによるものだと思えてきて、私は席を立った。
「行くところがあるから」
「ふーん、どこに行くの?」
優は寒そうにジャケットのポケットに両手を突っ込み、立ち上がる。
「ホームセンターまで、ちょっと買い物しに」
そうなんだ、って言って私達はそのまま公園を後にした。
新しい鍵を買いに行かなくちゃ。
今度は壊されないように。
壊す事が出来ないように。
部屋の中にいる時だけかける事が出来る、南京錠を買いに行こうーー。
壊されたら、また新しいのをつければいい。
優だって、今まで1人で頑張ってたんだから。
私もここで負けてはいけない……そう思った。