金魚すくい



「似合わないかな……?」



へらっと笑ってみせた。


ちゃんと笑えてるだろうか。


ううん……大丈夫。


きっと、ちゃんと笑えてる。


私は隠し事が得意なんだから。



一瞬優の表情が固まった気がしたが、再び笑顔で言った。



「いいや、似合ってるよ」


「へへっ、ありがとう」



肩に触れた長さの髪をおもむろに掴み、笑い続けた。


そう、私は笑い続ける。



それはお義父さんが私に初めて手を上げた日の事。


驚きと恐怖で涙が溢れた。


こんなにも自分の意思に反して、人は容易く涙を流れ出してしまうものなんだと、私はあの時知った。



髪だって伸ばしてた。


だけど、それすらもお義父さんの癇癪の引き金を引いてしまった……。


品行が悪くなってきてるから、少しでも見た目をよくしろって。


短い方が清潔感があるからって。


私の髪を引っ張りあげながら、ジョキンという音を立てて切り落とされた、髪。


髪を切られる音以外にも、心の中で何かが切れた音がした気がして、私はただ、その様子を他人事のように見ていただけ。



だけど……それでも私は、翌日には笑っていた。


ママを心配させないために。


誰にも気づかれたりしないように。



みんなの前では顔で笑って、泣く時はーー心で泣くんだ。