「はい」
優の笑顔付きでココアが差し出される。
ココアを受け取ろうと手を出した時、フと脳裏を過る痛み。
出しかけた左手を引っ込め、それを右手で受け取った。
「……? どうかした?」
「ううん、それよりお金……」
「いいよ、それくらい」
「でも……」
「その代わり、バイトまでの時間潰しに付き合ってよ」
再び微笑んだ優はさっきと同じ位置に腰を据えて、カチャリと音を立てる。
澄んだ空気の中、耳に心地よく響く音。
缶コーヒーのプルタブを開け、そのまま喉の奥へと流し込む。
それも束の間、今度は白い湯気を上げ息を吐き出した。
「柚子も飲んだら? 冷えるよ」
「……うん」
一瞬、優の横顔を見つめてたら、なぜか泣き言を言いそうになった。
言いそうになって……そんな自分に驚いた。
私は缶のプルタブを開け、温かなココアを冷えた口の中へと注いだ。
何もかもを流し込むように。



