「柚子、帰るぞ」



新学期始まったばかりで今日は授業がない。


午前中だけで学校は終わり、この後どこに遊びに出かけるかと各々話し合うクラスメイトで教室内はざわついていた。


だから聞き間違いだと思ったんだ。


私は背後からやって来た雄馬を見上げて、馬鹿みたいに口をあんぐりと開けていた。


そしたら雄馬は眉間にシワを寄せた。



「なんだよ、用事でもあんのかよ」


「あっ……ううん。ないけど……」


「じゃあ帰るぞ」



そう言って雄馬はスタスタと教室を出て行った。


だって、驚くのも無理はないと思う。


名ばかりとも言える付き合ってきたこの1年間で一緒に帰ったことなんて無いから。


それどころか、そんな風に声をかけてくれたのも小学校以来じゃないだろうか。


ひとまず私は慌てて帰り支度をして、雄馬の後を追うべく席を立った。