「優、あのねっ! 本当は私……ううん、私達は知ってるよ。優がどうして私達の前からいなくなったのか」
優の大きな黒い瞳が揺れる。
それは震えるように小刻みに。
「そっか……。まぁそうだとは思ってたけど」
私は遠慮がちに優の袖をぎゅっと掴んだ。
初めは意味が分からなかった。
なぜ突然優がいなくなったのか。
それは誰も知らなくて。
先生ですら学校が始まるまでその理由を知らなかった。
あの夏祭りの翌日、優は両親と一緒にこの街からいなくなってしまった。
「柚子が知ってる通り俺は、俺達家族は……夜逃げしたんだ。多額の借金から逃れるために」
私達はあまりにも子供すぎた。
だから誰も教えてはくれなかった。
どうして優が、優達一家が急にいなくなったのか。