「ただいまー」


「あら、お帰り」


実家の玄関を開けると、すぐにお母さんが出迎えてくれた。


「寒かったでしょう?お風呂沸かしてあるからね」


私の顔を見てお母さんが微笑む。


「うん、ありがとう」


突然電話して帰ってきた私に、お母さんは何も聞かずに普通に接してくれた。


そんなお母さんを見て、私は胸がジーンとした。


思わず溢れそうになった涙を堪えて、階段を上がり自分の部屋に入った。


高校生の時から全く変わらない私の部屋。


扉を開けてすぐの壁には、当時流行っていた男性アイドルのポスターが存在を放っている。


あの頃あんなに好きだった人なのに、今見ると何の感情も浮かんでこないから不思議だ。


カーテンもベッドもラグも全てピンクで統一されている空間は、自分の部屋なのにどこか落ち着かない。


しーんと静まり返った部屋。


ダメだ。このまま一人でボーっとしていたらまた気がめいってしまう。


何かして気を紛らわさなきゃ。


「お風呂でも入ろうかな……」


持ってた鞄から着替えを取り出して、私はお風呂へと向かった。