翌朝、食堂に行って朝食を摂ろうと部屋を出たところで、紫野さんに捕まった。




朝からお顔を拝見できたのは嬉しいけど、私に何の用だろう?




「……昨日頼んだこと、覚えてる?紗凪ちゃん」



昨日?はて、昨日何かお願いされたかな……?



「寮生を誘惑して欲しいってやつ。思い出した?」

「あ…。あー!!」




確かにそんな事言われたような気がする。


だけど、誘惑ってどうやればいいの?分かんないんですけど。


首を捻ってうんうん唸っていたら、苦笑した紫野さんがこっそり耳打ちをしてきた。




「寮生全員を狙えって言わないからさ。せめて天だけでも狙ってみてよ」

「……狙えって……どういう風に、ですか?」


紫野さんは暫し考え込んで、何やら閃いたのか明るく言い切った。