「……で、お前はそれが目的で、俺らの寮の大家になった訳?」


充さんは眼光鋭く私を睨んでいたが、私も負けじと睨み返した。


「質問の意味が分かりません」

「だから!俺らみたいな奴を見てニヤニヤするために寮に来たのかって聞いてんだよ!」



ダンッとテーブルに掌を叩き付けて、充さんは私を威嚇する。


充さん、『俺ら』って言った。『ホモ』って言わなかった。そこら辺プライドなのかな?



「……半分は、そうかも知れません。でも、朝言った私の気持ちも、本当です」

「……朝何かあったっけ?」



充さんが紫野さんに聞いた。すっかり忘れてるんだ、この人。


「紗凪ちゃんはさ、今まで一人で寂しかったんだねって宏樹さん達と話してただろ?宏樹さんと一くんがあの後、すごく心配してたよ?」


「……え、ホントに…?」




自分が誰かに心配して貰える事がこんなに幸せな事なんだと、この時つくづく知ったよ。


人と同じ空間に居られることの、温かさを。


優子さんや宏樹さん、それに一さんも。