素気ない言い方だけど、直接目を見て言わない言い方が、田尾くんらしくて何だか心が和んだ。


もしかして、それを言う為にわざわざあたしを追いかけてここまで来たの?


あたしは嬉しくなって、田尾くんのわき腹を肘で突っついた。


一瞬ビクッとした田尾くんはギュッと眉間にシワを寄せて、水道からキーパーを持ち上げて歩いて行った。


ポタポタとキーパーから滴る水滴が、一直線に伸びていく。


あたしはいつも両手でやっと持ち上げてるのに、田尾くんは軽々と余裕で持ち運んでいる。


言葉には少し毒があるけど、行動が優しい田尾くん。


憎めないな……。


「待って!!」


あたしが追いかけると、田尾くんが不機嫌に振り返った。


「早く来て下さいよ。これ、俺が作ったと思われると、迷惑なんで、ちゃんとイワシ先輩に説明して下さいよ」


田尾くんの表情からは、今にも舌打ちが聞こえてきそうだ。


あたしはムッと口を尖らせたけど、肩をすくめて子供みたいに「はぁい」と返事をした。