ジャリ……。


アスファルトの砂にこすれる、靴の音。


周りは帰宅中の生徒の声で賑わっているけれど、あたしと岩石先輩の耳には、彼らふたりの会話しか入って来なかった。


「……先輩」


小さな声だけれど、突然目の前に現れた日高先輩に、田尾くんの声が震えている。


あたし達は正門のすぐ横にある大きな木の陰に身を潜め、ふたりの会話を聞いていた。


「……え。何で、ここに?」


動揺を隠せない田尾くんは、キョロキョロと辺りを見渡していた。


「あ……誰かに、会いに?」


田尾くんは、今にも逃げ出しそうに眉をハの字に曲げる。


あたし達は、日高先輩に直接田尾くんに会いに来てくれるようお願いをしたんだ。


不意打ちで田尾くんが驚くかもしれないけど、先輩から直接会いに行ってくれた方が、田尾くんの傷が癒えるだろと思って。