「暑いだろ? それ持っとけ」


「ビックリした……」


先輩が手にしていたのは、まだヒンヤリと冷たさの残るクマの可愛い冷却剤だった。


「もうだいぶぬるいけど、ないよりはマシだろ?」


「可愛い」


あたしが先輩を見て微笑むと、先輩も柔らかな表情で口角を横に引いた。


あたしは先輩が貸してくれた冷却剤を首に当て、汗を引っ込ませる。


冷たすぎないこのぬるさがとても気持ちよくて、あたしは首の後ろに冷却剤を置いたまま歩いた。


さっきまで重かった足が急に軽くなり先輩と話をしながら歩いていると、高校に着く前に前からあの先輩が歩いてきて、あたし達は隠れる場所もなくただ佇んだ。


「あ……」


思わず声も出してしまい、前からひとりで歩いてきた先輩が不審な目で一瞬立ち止まる。


だけど、すぐにまた歩き出した。


突然の遭遇に体の固まってしまったあたしは、先輩と目を見合わせて深く頷き合った。