「神村っ!!」
「え? きゃ!!」
突然先輩に手首を下に引っ張られ、またしゃがみ込んだ。
あたしは先輩に体を守られるようにして、体を曲げる。
先輩の体で何があったのか、周りを見ることが出来ない。
「……先輩?」
「シッ。 黙ってろ」
先輩は静かに言うと、ギュッとあたしの体を抱きしめ自分も小さく身を丸める。
あたしはこの前の田尾くんとの出来ことを思い出し、また鼓動が早鐘を打ち始めた。
どうしよう……。
あたし今きっと、顔、赤い……。
あたしは田尾くんと急接近したあの日の記憶を消すように、頭を小刻みに振った。
「行ったか……」
先輩の力が緩み、その隙に髪を整える振りをして、先輩から顔を隠す。
「き、急にどうしたんですか?」
「アイツ。田尾がいた」
「え!?」
あたしは目を丸めて辺りを見回す。