「神村」


「え? ちょ、うわっ!!」


床で柔軟をしていた先輩が急に立ち上がり、ボーッと考え込むあたしの髪をボサボサに撫でた。


「神村の悪い癖、また出てるぞ」


あたしを指差し説教がましく言った後、爽やかに二重の目を垂らして笑った。


「あんま考えすぎるなよ? アイツのことは、ちょっと時間をかけて様子を見てみよう」


先輩はそう言って、ボールを持ってドリブルをしながら走って行く。


あたしは鳥の巣状態になった髪を手櫛で整え、先輩の走って行く白いユニフォームの背中を見つめた。


時間をかけて、か……。


どのくらいの時間が必要なんだろう……。