「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」


突然、あるコートから女子の黄色い声と男子の感嘆の声が上がり、あたしはこめかみを押さえながらそのコートを振り返った。


1年生と3年生のコートだ。


何に歓声が上がったのか気になりコートを覗き込むと、ちょうどそのコートで試合中の男バスキャプテンの岩石 有希(イワイシ ユキ)先輩がポカンと口を開け目を丸めている。


あたしは、男バスのマネージャーだ。


先輩……? 何でそんなに驚いているの?


早く頭痛薬を貰いに行きたかったけど、先輩の驚く表情に好奇心をかき立てられ、あたしは先輩の立つコートに向かった。


「岩石先輩、どうしたん……」


「神村!!」


「うわっ!!」


コートの外から声をかけると、こっちを見た先輩が急いで近付いてきて、突然あたしの肩に手を回してきた。


そしてあたしの耳に口を近づけ、「あの黒髪の1年を見ろ」と言う。