「市原先輩が可愛そう。さっき、噂を聞いた女バスのみんなが言ってましたよ。男バスのマネージャー最低って」


"最低“を強調させて言ったあやねちゃんは、口元に冷たい笑みを浮かべて壁から体を起こした。


「田尾くんが知ったら、先輩、心底嫌われますね。田尾くん、こういうの一番嫌いそうだから」


ニコッ。


あやねちゃんは、今この状況に全くそぐわない表情で笑い体育館へ歩いて行った。


あたしはまだドアの取っ手に手を掛けたまま。


確かに、こうなったのはあたしのせいだ。


岩石先輩が傷ついたのも、さおりが傷ついたのも。


あたしの考えが悪かったせいだけど……。


みんなに悪い噂を立てられるようなことは何もしていないのに。


どーせ、あることないこと噂してあたしを非難してるに違いない。


きっともう、それが田尾くんの耳にも入ってるかもしれないし。


あやねちゃんの言うように、田尾くんが一番嫌いそうなことだ。