「田尾くん、お願い!! 放課後、部室に来て!! 一度でいいから男バスを見学しに来てよ、ね?」


もうあたしはすがり付くようにお願いをした。


上履きに履き替える1年生達が、あたしを不審に見ていく。


「だから、俺バスケ部入る気ないっすよ」


彼の答えは、やっぱり昨日と一緒だった。


「何度来られてもムダなんで」


田尾くんはペコリと小さく頭を下げると、登校してきた友人に肩を組まれ廊下を歩いて行った。


ひとりずば抜けて身長の高い田尾くんの体が、友人に肩を組まれているので少し左に傾いている。


なんだ……。


ちょっとは笑えんじゃん。


無表情で何にも感情のない人なのかと思ったけど、友達と話す時にはちゃんんと微笑むんじゃん……。


あたしはムスっと唇を尖らせ、教室に戻りたくない体を無理矢理廊下を歩かせる。


ザーッと激しく降り続ける雨が、登校時間で騒がしい廊下に生徒の声と混ざって響いている。


悔しくてドスンドスンと大きな足音を立てながら歩くあたしの足音に合わせるように、雷鳴が遠くで轟いた。


絶対諦めないんだから。


男バス存続の為に、必ず彼をゲットしてみせる。