翌朝。


あたしは1年生の靴箱の前で田尾くんを待ち伏せした。


先輩に頼まれたわけではないけど、何とか彼を説得したくて……。


激しい大粒の雨が、靴箱の入り口に立っているあたしの所にまで降ってくる。


屋根はきちんと付いているのに、風に流される雨が、あたしの足やスカートを濡らしていった。


「田尾、おはよ~」

「田尾~」

「蓮、今日も朝から不機嫌そうだな」


あたしがどうにか雨をしのごうと落ちつかなくちょこまかと場所移動をしていると、彼の名前があちこちで飛び交ってサッと顔を上げた。


スクールバックを肩から提げ、ボーっとしながら靴箱に入って行く田尾くん。


朝だからか少し猫背になっていて、一重の目が余計細くなっている。


「田尾くん!!」


あたしは1年生で溢れる靴箱で彼を見失わないように、急いで彼の後ろに駆け寄った。


まぁ、田尾くんは長身で目立ってるから見失うことはないんだろうけど……。