最近、田尾くんの事ばかり考えてるのに、いざこうやって田尾くんが近くに来たらろくに話も出来ない。


さおりといい、あの子といい、行動力がすごいと思う。


あたしには出来っこない……。


チラリとさおりに目を向けると、さおりは汗だくになってコンクリートの上に倒れ込む岩石先輩にタオルを渡していた。


みんなちゃんとチャンスを逃さずに動いてる。


あたしは……?


水分補給をする田尾くんを横目で見る。


ゴクゴクと飲む度に上下に動く彼の喉仏。


ピンと張った首の筋を見ただけで心臓が荒ぶるのに……。


こんな状態の時に会話をしたら、きっと声が裏返るだけだ。


全て飲みきった田尾くんが一瞬こちらに目を向けた。



口にくわえるコップの隙間から少しだけ見える彼の切れ長の目。


流し目で見られたあと、彼は微かに微笑んだ。