あら、聞き間違いかしら。 もしくは幻聴?そうよね。きっとそう。 だってねだれ、とか聞こえたし。 そんな卑猥発言、まさか雅がするだなん て思えないし。 だけど。 「お前はきっと、俺が欲しくなる」 耳元で、囁くようにそう言われた言葉は 、胸焼けしそうなくらいに、甘くて。 さっきの言葉が、嘘でもなんでもないと 知る。 「じゃあな、麗」 そう言って、バイクに跨がる雅。 ああ、もう。 今日は惑わされてばかり。 次の日。 一度は開けた玄関の扉を、閉めたい衝動 に駆られた。