……そんな世界が、あればいいのに。



私しかいない、そんな世界。きっとそれ
はとてもつまらないだろうけど……でも
、この現実よりかはずっと素敵。



カシャン、とフェンスに身を預ける。



そしてそのまま、しばらく目を瞑ってい
ると───。



「あらあら。サボりとは、とんだ不良娘
じゃね~の」



という声が聞こえてきて、ゆっくりと瞼
を開けば、そこには仁斗が居た。



「……何の用よ」


「別に?屋上に来たいから来ただけだけ
どー?俺が屋上にいたら、駄目なの?」



意地の悪い笑みを口の端に浮かべながら
、その琥珀色の瞳で私を覗きこむ。



……私のこと、からかってるの?



「別に。じゃあ私は、もう行くわ」



体重をかけていたフェンスから身を起こ
して、そのまま仁斗の横を通り過ぎよう
とすれば。



「雅からは、逃げられねーよ」