私が訝しげにしていたからか、男がニッ
コリと微笑んで、口を開いた。



「俺はね、安西仁斗。いちおー黄龍って
呼ばれてるんだけど」


「おう、りゅう……?」


「んー、やっぱり知らなかったかぁ。ん
まあ、いいや~。ていうか大丈夫だった
?」



そう訊かれて、ああ、と呟く。



多分さっき殴られそうになったことを言
ってるんだろう。



「別に……。助けてくれて、ありがとう
ございました。……じゃあ私はこれで」



そう言って立ち去ろうとした私の腕を、
仁斗がぐい、と掴む。



「……何ですか」


「ねえ、なんでさっき、逃げなかったの
?」



……気付いてたなら、助けてくれなくて
良かったのに。



そんなことを思いつつ、仁斗を見上げる