どうせ逃げても、捕まえるくせに。


逃がさない、って目をしてるくせに。



雅の漆黒は、見つめていると引き込まれ
てしまいそうで、ほだされて、流されて
しまいそうで。



そんな激流に足を踏み入れてしまわない
ように、雅から目を逸らした。



それでも感じる、圧倒的な存在感。



本人にその自覚はあるのか。それは置い
とくにしても、関東最強はきっと伊達じ
ゃないんだと思った。



校舎がだんだんと前方に見えてくると、
それに比例するように、視線が集まるの
を感じた。



……目立ってる。すごい目立ってる。



そりゃ、雅と私なんかが、一緒に登校し
てきたらビックリだろうけど。



「なんであの二人が」とでも言いたげな
視線。



……目立ちたくなんてないのに。



静かに暮らせれば、それでいいのに、そ
んなことすら願うことも、許されないん
だろうか。