───だけど。



(あれ……?)



どれだけ待っても、痛みがやってくるこ
とはなく。



ふ、と目を開けて、すこし驚いた。



だってそこには、女の振り上げた手を、
後ろから掴んで止めている、笑顔の男が
居たから。



(……誰、この人……)



ニコニコ笑顔の男は、そっと女の手を離
し、女は顔を真っ赤にさせながら、口を
パクパクさせていた。



「あ、安西くん……っ」



安西くん?誰それ。と眉をしかめるも、
女の取り巻きであろう他数人のギャル達
も呆けたようにその男を見ていたから、
どうやらそれなりに有名人らしい。



安西と呼ばれたその男は、ニッコリとま
た微笑む。



「女の子が殴りあいは、だめだよ~、危
ないから」



ね?と少し首を傾げた男に、目がハート
になっていく女達。