母親がそう言った瞬間、ガタリ、と椅子
から立ち上がる音が聞こえて、驚いて母
親の方を見ると、母親が土下座していた




頭をぴったりと床につけて。



「……っなにしてんですか!」



俺は慌てて立ち上がり、母親の腕を掴ん
で起き上がらせた。



馬鹿じゃないのか、この人。



「こんな公共の場で、馬鹿なことをする
のはやめて下さい!」

「でも……こんなんじゃまだまだ、足り
ないの……っ」



ポタリ、と母親の目から、涙が零れる。



透明なそれは、次から次へと溢れだし、
俺の腕へと落ちてきた。



俺の腕で、雫が弾ける度、胸がきゅう、
と締め付けられる。



「ごめんなさい……!謝って済むことじ
ゃないこと、わかってるけど……っ!」

「──もう、いいよ」