「ねえお母さん、お父さん、どこに行っ
ちゃったの?」



ある日、もう一週間以上も父親の姿を見
ていなかった俺は、母親にそう尋ねた。



この頃、母親もだんだんと窶れていて、
様子が可笑しかった。だけど流石に、様
子が変だからと言って、原因を追求しよ
うとまでは、まだ小さな俺には出来なか
った。



俺の質問に対して母親は少し微笑むと。



「ちょっと今は迷子になってて、帰って
これないだけ。すぐに戻ってくるわ」



と俺に言い聞かせた。


──いや、本当は自分に言い聞かせてい
たのかもしれない。



まあ結果から言ってしまうと、父親は、
愛人の方へと逃げてしまっただけだった




母親よりも、愛人を選んだ。



それが、許せなかったらしい。



父親が居なくなってから一ヶ月。母親が
、可笑しくなった。