すこし口元を緩めながら、提灯を見つめ
ている。
「あんまりこういう所、来ねーの?」
そう訊くと、麗は少し寂しそうに笑って
頷いた。
「じゃあ、今日は今までの分も楽しもう
ぜ」
「そうね」
……不謹慎だけど。
正直、こういう所にあまり来たことがな
いっていうのは嬉しかった。
だってもしかしたら、こんな風に麗の浴
衣姿を見られた男は、俺が初めてかもし
れないだろ?……勿論、父親とかそうい
うのは抜いて。
自分でもどんだけ独占的なんだ、って思
うけど、出来ることなら麗の初めてを全
部奪いたいくらいだった。
その代わり、その時は。
俺の初めても、すべてくれてやるから。
「何か食いてぇもん、あるか?」


