すると空は、まだ不機嫌そうな表情のま
まで、俺を見上げてきた。
その瞳がどこか俺を責めるようで、思わ
ずたじろぐ。
「なんで兄ちゃんが謝るの?兄ちゃんは
悪くない。勝手なこと言った俺と、何も
わかってない父さんが悪いんだよ」
「や、でも、空にあんな風に言わせて、
父さんと気まずくさせちゃったしよ」
「俺は別にそんなこと、気にしてない」
気にしてないとか、そんなこと言ったっ
て。この先親父とギクシャクするのは目
に見えている。
その原因が自分だとわかってるから、俺
は心苦しいんだ。
本当は空にあんな風に言ってもらえて嬉
しいくせに、そのせいで空があの家で過
ごしにくくなったらどうしようかと焦っ
てる。
この矛盾した気持ちを、俺はどうしたら
いいのかわからなかった──……。
三日後。
今日は麗がやって来る日。
朝から俺は、麗が来るのをどこか心待ち
にしていた。


