だけど空は動かなくて……多分、自分の
保身の為に動きたくないんだろうけど。
この前も、同じようなシチュエーション
だったとき「兄ちゃんばっかり犠牲にし
たくない」とか言ってたし。
そんな気遣い要らねえっていってんのに
、空は全然聞く耳を持たない。……こー
いう所だけ頑固なんだよな。
そうしてる間に、当然親父はリビングに
やって来るわけで。
「ああ、空──……と、お前か」
空を見つけた親父は一瞬表情を緩めてか
ら、すぐに俺を見つけて、その瞳を鋭く
尖らせた。
そして、冷たい冷酷な眼差しのまま、俺
と空を見比べる。
空は、ジッと唇を噛んで、親父を見つめ
ていた。
「なんでお前がリビングに居るんだ」
「俺がどこに居ようと、俺の勝手だろ。
一切家事をしねぇ誰かさんの代わりに、
夕食を作ろうと思っただけだ」


