はぁ、とため息をついて、読みかけてた
本にまた視線を戻すと。



「───失せろ」



地鳴りのように低い、声が空間を凍らし
た。



少し驚きながらドアの方へと目を向けれ
ば、雅が驚くくらい冷たい眼差しを、女
に突きつけていた。



「……ぇ…」


「聞こえなかったか?失せろ、って言っ
たんだよ」


「獅童様……っ」


「汚い声で名前を呼ぶな。仰せのままに
、って言ったのはテメェだろ?──生憎
俺はあんたみたいなのは、嫌いなんでね




雅はふ、と嘲笑すると、ずんずんとこち
らへと歩いてきて、私の腕を取って、立
ち上がらせた。



その拍子に、小説がバサバサっと落ちる




呑み込まれてしまうほどの黒と、ぶつか
って。



「行くぞ」



そう言われて、抵抗も肯定も出来ないま
ま、教室から連れ出された。