いっそのこと、二度と帰ってこなけりゃ
いいのに。
俺にもっともっと経済力があったら、空
を連れて逃げんのに。──なんて、途方
もない事を考えては、虚しくなる。
親の援助なしには生きられない自分が、
悔しい。
家に入ると、毎度の事ながら、どうしよ
うもない嫌悪感が襲ってくる。
そしてここから、逃げ出したくなる。
「兄ちゃん……?」
恐る恐るといったように階段を降りてき
たのは、空。
そして俺の姿を見つけると、パアッと笑
顔になった。
小走りで俺の元に駆け寄ってくる空が可
愛くて仕方ない。
「ただいま、空」
「お帰り!今日は早いんだね?」
「ああ。夕食作ろうと思って」