だって、麗ちゃんに手を出したりしたら
、雅に何されるかわからないからね。
仁斗だって、わざわざそんな危ない橋を
渡るほど、女の子に困ってるわけでもな
いし。
賢明な判断だよね、うん。
「……紗智(さち)ちゃん、今、どんな
様子?」
それとなくそう聞いてくる仁斗に、俺は
僅かに笑ってみせた。
「変わらない、よ」
悔しいくらいに。
何も、変わらないんだ。──あの日のま
ま、まるでそこだけ時が止まったように
。
俺も前に、踏み出せないまま。
世界はとても残酷に回り続けてる。俺の
気持ちを、置き去りにして。


