資料室の中へと促すと、少し低い声で、
どこか咎めるようにそう訊いてきた麗ち
ゃん。



俺はそんな麗ちゃんに、ニッコリと微笑
む。



「だって、じゃないと君は、逃げ帰って
しまいそうだから」



放課後になってからじゃ、すぐに帰宅し
てしまいそうだったからね。



図星だったのかなんなのか、麗ちゃんは
俺の言葉に、不愉快そうに眉を寄せた。



「……随分な言い草ね」


「今朝だって、あんな態度だったからね
。念には念を、ね?」



クスッと意地悪く言ってやると、「あれ
は……」と麗ちゃんが口ごもる。



だけど、諦めたのか、麗ちゃんは小さく
息を吐くと、その長い髪を揺らしながら
、資料室に入っていた。



思わず、その漆黒の髪を見つめる。



圧倒的な、黒。


何色にも染まらない、黒。