ガウンガウンと鳴る頭部はもう施しようもないため放置。

フレマさんも怒って「私ももう仕事にいくから」と言い放ち、近くにあった鞄の中を整理していた。


「ああ、そうそう」


鞄を腕にかけ去り際に口を開くフレマさんに、私は首だけを動かして次の言葉を待つ。



「あんたの飼ってる猫、ほんとにあんたが大好きなのね」


「え、」



それは一体どういう意味なのだ。
私は猫など飼っていない。

掠れた声でそう伝えようとするも、既にフレマさんは障子を閉めてさっさと行ってしまった。


その言葉の意味を考えようにも、ズキズキと痛む頭を動かす気にはなれない。

はて、フレマさんがおかしいのか。
それとも私が記憶をなくしたのか。

前者はありえるにしても後者はどうだろう。たかが風邪程度で記憶が吹っ飛ぶものなのだろうか。

うーむ、……痛い。頭痛が酷い。
どうやら風邪も侮れないようだ。


こほ、と咳をこぼして天井のシミに焦点をあてる。あ、あのシミ、まるで肉球みたいだ。ひどく歪だけれど。


そういえば、あの青猫はどうなったのだろう。どうやら私は四日間眠っていたようだがその間ずっとあの場所にいたんだろうか。

あれ、そういえば先程フレマさんが存在していない私の猫について何か言っていたような、……。


まさか。


衝動的に掛けてあった毛布を押し退け体を起こす。…が、そういえば私はものすごい高熱を出していて、頭痛も酷いうえにこう動いては体への負荷はかなり大きいはずだ。

「ッツ!」ズキン、とまるで金属バットで殴られたような…、いやさすがにそれは死ぬ。本の角で殴られた衝撃が走った。

意外と本の角で殴られると痛い。
かなりクる。

日本のボクサー具志堅に殴られたぐらい痛い。殴られたことないけど。