「俺、昔1回だけテレビに出たんだ」
葵は興味無くて観てないだろうけど、バイト先で演奏している所に取材が来た。
偶々母親がその番組を観たらしい。
そして、連絡無しであの女がバイト先に現れた。
オーナーに許可を貰い、近くのカフェに入った。
「天道、・・・・・・・湊だったわね」
カフェに入って第一声がそれだった。
「私は増井恵理(ますい えり)」
増井?
俺と名字が違く、再婚したのかと思った。
普通はそう思うもんだろ?
「あの子元気?」
あの、子・・・・・・?
「あぁ、知らないのか。葵よ、増井葵」
真顔でサラッと口に出すと、コーヒーを飲んだ。
この女、葵の母親・・・・・・・?
だったらこの女は俺のなんなんだ?
「まあ手順を踏んで説明しましょう。あなたは私が16の時に生まれたの」
待てよ、“私が”ってどういう意味だよ。