私が小さく頷くのを確認すると、「よし」と満足げに一呼吸して私に預けたままの荷物を手に取った。


「じゃあ行くわ……ホント、廃品回収とかに出すなよ?」

「分かってる。じゃぁ、気をつけて」

「おお、またな」

「またね」


私と健太の距離が開く。
そして、健太は背を向けて、自転車ではなく歩いていつもの角を曲がっていった。

一人立ち尽くす私は、あちこちから聞こえてくる蝉の声に包まれているようで、夏の景色の一つになった気分だった。



ーーさよならじゃないからだ。