僕がまだ完全な人型に化けられなかった頃ーー狐の姿で町の中を散策していた。

 仲間の妖怪三人と、食べ物を探すためだ。

 本当は人間が食べたいけれど、町中で騒ぎを起こすと住みづらくなるから我慢する。

 昨日の食料調達は、藤と牡丹が鼠や果物をたくさん採ってきてくれて大収穫だった。僕と楓も活躍したいのに、なかなか上手く行かない。

 藤は鴉で空から獲物を探せるし、牡丹は元々野良猫だったから、その頃使っていた裏道や穴場を使っている。

 ーーそれに比べて、僕と楓は分が悪い。

 楓は白い蛇で、目立つ上に獲物を一度飲み込んで運ぶもんだから、楓が大収穫を納めても、あんまり有り難くない。

 僕はと言えば、やっぱり目立ってしまって、思うように散策出来ないのが問題だった。

 狐だと言うだけで、町中では目立つのに、その上普通の狐と違うことがある。

 ーー背中で薄目を開けている妖眼と、九本の尻尾だ。

 これでは、せっかく獣化していても、妖怪だとバレてしまう。