「それでは、ごゆっくり」
俺たちが通された座敷は、
島原で一番広いと思われる座敷だった。
流石にこの人数じゃあ
普通の座敷じゃ入んねぇからな←
それに、広い座敷の方が
ここにやってくる花魁の数は多い訳で、
それ以外の店の者も沢山出入りする。
だから、日向を探すのには
とても好都合だ。
女中たちが、
豪華な料理を運んできた。
俺はあまり目立たないように、
その女中たちの中に日向を探したが、
それらしき姿は見当たらなかった。
…ここにはこねぇか…?
何しろ、日向から新撰組を離れたんだ。
そうとう責任を感じてやがったから、
そうやすやすと俺らの前に出てくるとは思えない。
しゃあねぇ、
宴会の合間にこっそり抜けて探すか…
「それでは…」
皆の席に料理が運ばれてきたところで、
近藤さんが立ちあがった。
「皆、池田屋での任務、ご苦労だった!
今日は思う存分、飲んでくれ!」
「おおおおおおおお!!!!!」
近藤さんの音頭で、
座敷は一気にお祭り騒ぎとなった。
最近酒を飲んでなかったであろう平隊士達は、ものすごいスピードで喉に酒を通してゆく←
それに比例して、
金がものすごいスピードで消えていってる事なんて、全く考えていないだろう。
その光景を見ながら
一人苦笑いしていると、
もう顔を赤くした左之が
酒を持ってやってきた。
「土方さん、飲まねぇのかよ?
飲めるだけ飲んどかねぇと、
次、いつ宴が出来るかわかんねぇぜ?」
そう言って、俺のお猪口に酒を注いだ。
「確かにな。そう言って一気に飲むから、酔い潰れる奴らが続出する訳だ。」
ほら。と向こうの方を見ると、
平隊士たちが、次々と倒れてゆく←
ここの隊士は単細胞生物なのか、
毎回毎回こうだ。
ちっとも学習しやしねぇ←
俺が呆れていると、
豪快な笑い声が聞こえてきた。
「ははは(笑)皆、酒弱ぇなぁ!」
と、爆笑している新八は、
すでに足取りがおぼつかない←
いや、おめぇがな←
と、心の中でつっこんだ者は
かなりいるだろう←
「そういう土方さんは飲まないんですかぁ?自分から宴会開こうって言って、ちっとも飲んでないじゃないですか。」
もともと酒をあまり飲まない総司が、
ちびちびと酒を飲みながら言った。
しかも、
まだじとっとした目で見てきやがる←
完全に怪しがられてるな←
「馬鹿か。酔い潰れたテメェらを介抱するのは誰だと思ってんだ。このペースじゃ、すぐお開きだぞ?」
まだ、花魁も来てねぇってのに。
と、俺は顔を引きつらせた。
そう、そこなのだ。
花魁がまだ来てねぇんだよ!
さっきの新人花魁は
上玉を用意するっつってたけど、
全く来る気配がねぇ。
それなのにお開きになってしまったら
俺の計画が台無しだ←
「へぇー?そんな事言って、本当はお酒に弱いんじゃないですかぁ?」
「ばっ!ちげぇよ!俺は酒を飲まないだけだ!そういうテメェが、酒弱いんじゃねぇかよ」
「僕はもともとお酒好きじゃないですし。」
うぇー、苦い。と
ちびちびと全部飲んだのか
総司は、お猪口を口元から外した。

