すると、
「なら良かった!!
じゃあ、日向ちゃん頑張ってね!!
応援してるからっ!」
さっきまで号泣してたのに、
ケロっと泣き止んだ鈴ちゃん。
そして、今までにないくらいの
とびっきりの純粋な笑顔で
あたしの前から消えた。
…正確には、
とてつもない速さで逃げた←
「…。」
あたしは某然とその場に立ち尽くした。
今、分かった事。
鈴ちゃんはとても純粋な
小悪魔だという事←
殺し屋なんかより、
断然この職業がぴったりだと思います。
そして、もう一つ分かった事。
「おい、そこの杏子って女、」
あたし、楠木日向は、
かなりのピンチに陥っているという事←
さっきあたしが入ったお座敷から
一人の男が出てきた。
その男は鈴ちゃんの言う通り、
酒臭いおじさんじゃないし、
ブサイクじゃないし、
むしろイケメン?だし、
確かに地味に偉い人だ。
けれど、一個だけ違う。
今、こいつの前では暴れたらいけない。
確かにいつものあたしなら大丈夫だ。
だって、天才日向様だもん。
しかし、今着ているこの着物。
豪華で派手に動けないし、
そもそもこの着物、かなり重い←
それプラス、頭の大量の簪←
身体がいつもの倍くらいの重さだ←
こいつに勝てる確率は少ない。
そして、
「お前ちょっと顔見せてみろ。」
こいつには杏子として接しなきゃいけない。
暴れたら楠木日向だってバレる。
だって、
「おい、無視すんなテメェ」
こいつ、
「おい、聞いてんのか」
…土方歳三じゃないか。
「…すいません、ボーッとしてまして。
今、担当の者を呼んで来ますから。」
あたしは、
今走れる最速の速さでその場を去った。
息苦しくなるほどドキドキしている
うるさい心臓の音を掻き消すように。
そう、
あたしが入ったお座敷にいた、
特別なお客さんとは、
新撰組の皆だった。

