「じゃあ、杏子ちゃんっ、
お座敷に上がるよ??」


「う、うん。」


お座敷の襖の前に正座して、
そろーっと襖を開ける。


「失礼します。小夜どす。
こちらは、新人の杏子。
どうぞよろしゅう。」


ええ!?言葉遣いバリバリマスターしてるじゃん!?


「よ、よろしゅう…(?)」


そう言って、頭をぺこりと下げる鈴ちゃ…じゃなくて、小夜ちゃんに続き、
あたしも見よう見まねで頭を下げる。


すると、


「ほー、新人さん?
こっちにきてお酌してくれよ」


酔っ払ったおじさんの様な声が聞こえた。


おえ。


…と言いそうになるのを堪えながら
顔を上げると、


やっぱり、酔っ払ったおじさんだった←


つーか、このお座敷、
おじさんしかいねぇよ…←


え、どうすんのコレ。
手招きされてるけど、
行かなきゃいけないのか!?


と、顔を引きつらせながら、
目で隣の小夜ちゃんに訴えると、


「(が、頑張ろ!)」


小夜ちゃんの顔も引きつっていた。


まじかい…。


あたしは、渋々、
(作り)笑顔で酔っ払いおじさんの元へと向かった。


刀を持っているから、
どうやら武士らしい←


「杏子ちゃんだっけ?
可愛い顔しとるなぁ。」


そう言いながら、酔っ払いおじさんは顔を近づけてきた。


酒臭いんだよ、クソ爺っ!!


…と、言いそうになるのを堪えて←


「い、いややわぁ。
褒めても何も出て来いへんよっ」


見よう見まね過ぎて、
何言ってるか分からない京言葉を喋りながら、あたしはお猪口にお酒を注いだ。


「お、ありがとよ。
いやいや、いい顔しとるし、
いい体しとるで?」


「!?」


ニヤッと笑ったかと思うと、いきなり、
酔っ払いおじさんはお尻を触ってきた。


のぉおおぉぉおぉおお!!!


き、きもいっ!きもすぎる!!!


あたしは、ぶん殴りそうになったが、
どうにか堪えた。


…うん。頑張ってるわ、あたし←


あたしは引きつる顔を無理やり笑顔にして、


「お、お客さんの方がいい体してますわぁ。刀を持ってはるって事は、お侍さん?」


と、聞いた。すると、


「そうだ!わしは、日本の未来を変える攘夷浪士様だ!!」


ガハハと笑い、お猪口の酒をグイッと煽った。


「わぁ、凄い(馬鹿な←)お方なんどすね!!」


いつ何処に新撰組がいるか分からないのに、自分の素性をペラペラと喋って…


もう、馬鹿にするを通り越して、
呆れるねこりゃ。


「どうだ?わしと一晩「それは無理なんどす。まだ新人で、お手伝い程度しか出来ないんで。」」


ソッコーで遮って、
後半の言葉はもはや標準語←


あたしは笑顔を保ちながら断った。


つか、おじさん展開早過ぎない!?


というか、きもい!!
ガチできもい!!!


という目で見るが、
酔っ払ってるせいで全く気づいてないのか、


「いいじゃねぇか。ほらほら。」


そう言って、別の部屋に連れて行こうとしてきた。


ちょ、もういい!?
殴ってもいい!?


そう思い、
小夜ちゃんの方を見てみると、


「ちょ、お客さん、うちはまだ無理なんどすぅ〜っ」


…小夜ちゃんも同じ状況に陥っていた←