せっかく来てくれたのに、今のはないよね。



玄関を出ると、草野くんの姿はもうそこにはなかった。



わっ、いない。



そうだよね、あたしが先に行ってって言ったんだもん。



学校に着いたら、謝ろう。



仕度を済ませ、すぐに家を出た。












電車に乗り、学校へと急ぐ。



自転車の方が早く着くから、草野くんはもう学校に着いているはず。



どこにいるんだろう…。



美術室かな?



メールしてみようかな……と思っていると、知らない番号から電話がかかってきた。



え……誰?



出るのをやめようとしたけど、もしかしたら草野くんかも。




とりあえず出てみることに。




案の定、電話の相手は草野くんだった。




「三沢さん、今どこ?俺は美術室にいるよ」




「学校に着いたところ。すぐに行くね」




急いで美術室へ向かう。




うちの学校の運動部は朝練もないし、早朝の校舎にはほぼ人がいない。




早く来ている先生もいるはずだけど、職員室にいるのか、




廊下を歩いていても、誰ひとりすれ違わなかった。




いつもは賑やかな校舎をひとりで歩くのって、爽快!




2階の渡り廊下を越えると、別館にある美術室へ到着。




美術室の扉は閉まっている。




――カチャッ。



扉を開けると、中に草野くんがいた。




「おまたせ……」




「待ってないから大丈夫。すぐに始めようか、そこにカバンを置いて靴と靴下を脱いでここに立って」




「えっ……靴下まで脱ぐの?」




草野くんが指す場所にバスタオルが敷いてあって、なぜか裸足で立たされる。