「勿体ないよね、ほんと」

「何がよ」

「アンタの幼馴染みくん?」



今日も麗しい我が親友は、ペットボトルのレモンティーを一息に飲み干すとふうと息を吐いてそんなことをのたまった。

はあ?と思わず眉根を寄せれば、「痕つくわよ」と細い人差し指でとんと突かれる。
思わず眉間を抑えながらもう一度はあ?と繰り返した。



「那智のどこが勿体ないの?」

「んー、全体的に?ルックスは極上なのに性格悪いとことか、喋らないとことか」

「あー…」



そういう意味ね、と納得してわたしはりんごジュースを啜った。ジュルジュルと音がして、それの中身がもう空であることを示す。

紙パックはやっぱり消費が早いこと、と思いつつ、ストローを抜き取った。

そしてすっと視線だけを移動して那智を見遣る。彼は今日もまた文庫本片手にメロンパンを頬張っている。あれ、昨日はクリームパンだったっけ。
そして彼は今日は黒ぶちの眼鏡を掛けていて、それがより一層近づきがたい雰囲気に拍車を掛けていた。

そういえば、昨日コンタクト失くしたとか言ってたな。

あの姿を見るのは中学生以来か、とそこまで考えてから彼を凝視してしまっていたことに気付いた。
一瞬視線を逸らし、まあいいや、那智気付いてないし、と開き直ることにした。


椅子に浅く腰掛け、長い脚を持て余すように軽く組んだその姿はきっとそのまま雑誌か何かの表紙を飾れるであろうほど絵になっていて、尚且つ余裕を感じさせる。
…腹立つなあ、とぼんやり思った。

自分で言うのも何だが、わたしはそこそこ顔立ちもいい方だと思っているが、那智を見ていると自信が無くなっていく。

それほど彼の容姿は端正で、確かにあの性格が緩和されれば人気も出るだろうに、とは思った。出ない方がわたしとしては有難いのだけれど、と言う個人的な思いは胸に秘めた。