「そ?なら行ってきなよ、ほらっ」 「…っ、うん」 ありがとう、と呟いてからわたしは那智に駆け寄った。 頑張れ、と囁くような久世くんのエールが聞こえた気がした。 *** 「那智…っ!」 「ん、おかえり美由紀」 「おかえりじゃないよ…!………話があるんだけど、ちょっと、いい?」 「あー…うん、いいよ」 どこがいいかな、なんて言いながら自然に彼がわたしの手を握った。絡め合う指は本当に心地よく馴染む。 少し低めな彼の体温に涙が出そうになって、慌ててそれを堪えた。 まだ泣くのは早い。