ただ、かなり難のある正確であることには間違いない。何せあんな虫も殺せなさそうな繊細そうな風情をしているというのに、アイツはわたしにお茶をぶっかけやがったのだ。

何日か前のことを思い出してまた苛々してきた。結局お茶の染みは落ちなかったので新しいティーシャツを三枚買わせた。当然だ。…駄目にされたのは一枚だけれども。



「何話してンの?」


そんなことを考えていると、唐突にそんな声が響く。

ひょっこり、いきなり後ろから顔が覗き、わたしの身体は大袈裟に反応して揺れた。
振り向けば、そこにはいかにもスポーツマンタイプの好青年といった風情の、そこそこに日焼けしたクラスメイトの姿。久世くん、だっけ。曖昧な記憶を手繰って半ば無理矢理彼の名前を引っ張り出してくる。

あまり男子とは話さないわたしもそこそこ会話を交わせる珍しい相手だ。



「え、あ、ごめん何かビックリさせた?沢木のこと」

「あー…まあ、ちょっとね」

「ごめん」



本当に申し訳なさそうに手を合わせる彼。その誠実な姿に一瞬きょとんとしてしまう。…普段接している男子というのが那智なんていう、扱いに困るような奴だから、こういう誠実で実直な感じの男子には慣れていない。

いや、アレと普段接しているからこそ彼の純粋さとでも言おうか、そんなところがより強調されるのかもしれない。