せっかく授与されたのに、と言おうとしたが、彼の恍惚な眼差しは、一直線に、雑賀孫一へと向けられている。 もはや刀になど興味もないのだろう。 「あ、そうそう」 そこで、朱尾が話題を切り替えた。 「妹さんに会いましたよ」 朱尾は濁りなき笑顔で言った。 いや、違う。 お前が会ったのは妹じゃなく、彼女だ。