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酒童は久方ぶりに、1人で昼の街を歩いた。

なにしろ昨日は一段と早く帰ってきて、早く眠りにつけたのだから、午前中は数十分ほど睡眠をとったら、もう眠気はなくなっていた。


『ひょっとしたら』


陽頼は仕事に出ていく前、こんなことを話していた。

その時の酒童はといえば、寝室の入り口上に足を引っ掛け、上体起こしを繰り返していた。


「なんだ」

「昨日の人が持ってた巾着。
あれ、中に銃が入ってたりして」


昨日のタンクトップ男のことだろう。

酒童は上がぶら下がったまま、ふむ、と考えてみた。


「ゴルフバッグにライフルとかが入ってたら、うなづけるかもな」

「もしかしたら、あの人、スナイパーかなにかかも?」

「んな馬鹿な」


陽頼には悪いが、冗談にしか聞こえない。

大体、酒童はスナイパーに狙われるようなことなど一切していないし、この銃刀法が施行される世の中、

ゴルフバッグに入るほどのライフル銃などを堂々と持ち歩いていたら、一発で報道間違いなしだ。


「そうかなあ。
確かに、銃をもったら百発百中、みたいなプロにも見えなかったけど」

「そんな……。
古いアニメじゃあるまいし」


酒童は困る。

銃を所持しているのは確かだろうし、そこだけは陽頼のボケではないはずだ。

ただ、プロのスナイパーだとか、呑気に茶を飲むような顔で言われても、正直、危機感を感じられない。