呪法班が観測した例のトカゲの化け物のスケッチが鬼門の許に届いた。


「その地区の班員が見たのはこの1体だけですが、その周りにも多くの瘴気を感じました」
 

 呪法班精鋭、信太晴明が鬼門に差し向ってそう述べた。


「多く、とは?」

「気配と瘴気から具体的な数までは確認できませんが、酒童班が担当する住吉地区に隣接する区だけでも、15以上ははいるかと」

「……えげつないですね」


 鬼門は額を押さえつつ、渡されたスケッチブックを凝視した。

 それはとても抽象的な絵で、化け物の特徴しか捉えられていない。


 しかし、鬼門は一目で、それがなんなのかを理解した。


 鬼門は24年前にも、これを見たことがある。


「化け物めっ……」


 鬼門の毒づく声は、窓から差し込む夕日へと蕩けた。


「―――天野田班と酒童班を共同作業にさせる。
その住吉地区の近傍にいる班も、駆除作業が早く終わったところは、なるべく住吉の方面で待機をするように」


 鬼門の後ろで椅子に腰かけていた地区長・加持は、班長の中でもベテランである鬼門に指示を仰いだ。