西洋妖怪との戦いでではなく、鬼の血との戦いで、酒童は大幅に体力を奪われていた。

 地面に仰向けに横たわり、胸を上下させる。


「酒童くん」


 天野田が屈んで、酒童の様子を伺う。

 秋の真っ只中というときに大汗をかいて疲弊している酒童を見るなり、天野田は酒童の頬に手を添えて、堅く目をつむった。


「―――ごめん。
少しキツい呪法を使ったんだ。
熱かったろう」

「ちょっとだけ……」


 本当は凄まじく熱かったが、天野田が本当にすまなさそうな貌をしていたので、酒童は嘘をつく。


「けど、お前のおかげで助かったよ。
ありがとう」


 酒童は感謝の意を、なるべく元気に微笑んで表してみせる。

 本当に、天野田がいなければ危なかった。

 酒童はこの人生で5回目、天野田に心底から感謝するのだった。