羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》




「間の抜けた返事だな。
前からオトオドヘコヘコしてるような奴だとは思っていたが」


 一流の呪法班員は、どうやら洞察力にも優れているらしい。

日頃の青木の姿を完膚なきまでに言い当てられる。


「……よく言われました。
『ヘコヘコしてて弱そうだ』って」


 はは、と。

 青木は引きつった笑みを返す。


「……まあいい」


 晴明は眼を半分ほど伏せ、純白の直衣から呪符を数枚取り出す。


「このことは、幹部の方々に報告するとしようか」

「精鋭の方たちには言わないんですか?」

「言ったところであしらわれるだけさ。
君ならまだしも、俺の言っていたことさえ『まさか』と笑い飛ばしたほどだからな」


 晴明は精鋭たちに信用されなかったことを、そうとう根に持っているらしい。


「まあ、わからんでもない。
呪法班において、最も正しく的確なのは“精鋭が視た未来”。
魔方陣の外にいたものの証言よりは、遥かに信憑性が高いからな」

「では……どうするんです?」

「決まってるだろう」


 晴明の眉が山を作る。


「あれは羅刹の手には負えなさそうだしな。
呪法班で援護するしかないだろうよ」

 
 晴明が呪符を撫でると、それは喜ばしげに赤く染まる。














 これは、人狼襲撃事件の直前の話である。