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羅刹の装束を身にまとったものたちが、狼の首をした大男を前に立ち竦む……。
そんな情景が、予知を担当するレギュラーの呪法班員のそばに居た青木の眼にぼんやりと映る。
はっと開目した青木の前には、燐光を放つ五芒星魔方陣の中で式占を行う呪法班員たちが、そこで輪を作って居た。
「オン・シュチリ……」
「ビキリダナ」
「サルバ」
「シャトロ」
「ナシャヤ」
「サタンバヤ」
「ハン・ハン・ハン」
「ソワカ……」
大威徳明王哭の真言の一端が、拠点と同じ敷地に立てられた蔵の中に響き渡る。
昼下がりだというのに、この締め切られた蔵の中は闇夜の如く暗い。
燐光の魔方陣の中にいるのは、いづれもここに配属となった“呪法班の精鋭”、つまり主に大怪我の治癒や予知を担当する班員たちである。
その一方で、青木は彼らが居る魔方陣の外で膝をついていた。
しばらく眼を開けて呆然としていた青木だったが、
「青木さん、まだ式占は終わってないよ。
集中して」
と、年配の女性班員に注意を受け、慌てて眼を閉じる。
「はっ、はい」
言われて、青木は神経を研ぎ澄ます。
式占では大概、予知をするのは精鋭の班員の役目であるが、予知をしない“脇役”の班員は、こうして魔方陣の外で控えていなければならない。
もし誰かが呪力の限界で気を失ったとしても、脇役がそこを補えば、あとは技術のある他の精鋭たちが式占を行う。
要は、鮮明な予知をするだけの高度な技術を持たない“脇役は”、いわば“換えの利く乾電池”なのである。
式占での予知ができない、というわけではないが、カメラと同じで、よりはっきりと予知が視える者こそが重宝される。
ぼんやりとしていてモザイクがかかったような情景しか視えない青木は、まさにそんな“乾電池”のひとりなのだ。
いくらでも代わりのある人材。
自分がそんな立場であるということくらいは、青木自身も十分に自覚していた。
羅刹は強弱問わず連携プレーが必要となる仕事だが、呪法班はそうではない。
強い者は強い者だけで連携を組み、弱い者はそこらに放ったらかしにされ、呪法とはほとんど関係のない雑務をこなすのである。
(さっきのは……あれはなに?)
青木は疑問を抱えた。


