陽頼は、きのう夜更かししたにもかかわらず、眠気が起きなかった。

 というのも、単に恐怖番組を見たせいでも、コーヒーを飲み過ぎたせいでもない。

もっと重要な事だ。



 酒童が、昨日から帰ってきていないのだ。


 都心へ出かけたあの日、西洋妖怪が出現したという事で、急遽デートは中止となり、酒童はすぐに、天野田たちと仕事に向かってしまった。


『ごめん。
たぶん、帰りは夜遅くだと思う』


 ひどく落ち込んだ様子で電話を掛けられ、それきりだった。

 自分用のマフラーが入った買い物袋と、置きっぱなしにされていた『シメムラ』で買った服の袋を携えて、陽頼はとぼとぼと家路を急いだのだった。


 大丈夫、夜遅くに帰ってくるんだから。


 アクセサリーショップで包装してもらったものを胸に抱き、陽頼は酒童の帰りを待ちわびた。
 
 しかし、どれだけ待っていても彼は帰ってこなかった。

だから、仕方なく寝付いた。

 
 明日になれば、きっとまた横に寝転がっているだろう。

 いつものことだ。


 陽頼は高をくくったつもりでいたが、朝はやく起床しても、隣に酒童の姿はなかった。


『嶺子くん……?』


 それからずっと、陽頼が仕事か帰ってきた後も、酒童は部屋にいなかった。